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2010年01月26日

【セミナー報告】検証:ODAを問う〜メコン開発から見た環境と人権への影響〜

1月23日、東京芝大門の人権ライブラリー会議室にて、メコン・ウォッチとFoE Japan主催のセミナー『検証:ODAを問う〜メコン開発から見た環境と人権への影響〜』が開かれた。鳩山首相が昨年メコン流域に今後3年間で合計5000億円にものぼるODAの供与を表明したのを受けて、本セミナーは、過去の開発プロジェクトの過ちと今メコン流域諸国が抱える問題に焦点を与えることで、今後の巨額な支援が相手国の環境、人権、社会構造等に与える悪影響に警鐘を鳴らした。

プログラムはODAの概観説明に始まり、続いてカンボジア、ミャンマー、ラオス、タイ各国の事例が紹介され、最後に日本のODAに何を求めるかという議論で締めくくった。

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冒頭では、満田夏花さんが日本のODAをデータで振り返り、日本のODAが歴史的にアジアに集中しており、今でも多くのアジア諸国にとって日本が最大のドナーであることを強調した。その日本の外務省は近年のODA予算の削減で日本は重要な「外交ツール」を失いつつあり、結果、日本の国際的な「発言力」が下がったと主張しているのに対し、満田さんはODAを「外交ツール」とする見方を疑問視する一方で、ODAへの関心は既に「額」から「質」に移っていると指摘した。

事例紹介のトップバッターは、土井利幸さんによるカンボジアにおける強制立ち退き問題のプレゼンだった。現在起こっている立ち退き事件の多くは日本のODAとは直接的な関連はないとしながらも、土井さんは日本政府の対応にはいくつかの問題があると指摘した。まず、カンボジア国道1号線改修プロジェクトを例とする立ち退きを伴うODA事業は已然として継続している。日本は過去の失敗から学ぶことなく、移転を強いられた住民に対して十分に補償を支払わず、また彼らの移転後の生活について調査することもなく、道路建設の無償資金協力をどんどん進めている。

第二に、日本はカンボジアにとって最大のドナーである。従って、日本政府には、カンボジア政府に対して暴力的、非民主的な強制立ち退き行為を停止するよう要請する力があり、またそうする責任がある。その上で、カンボジアの土地制度や移転政策を整備する支援を行うべきである。しかし、日本政府が取った行動はその真逆であった。2009年7月16日にカンボジアのドナー各国が、「国内の土地紛争地域での強制立ち退きを停止し、風霜解決のための校正で透明な手続きを導入...するよう」カンボジア政府に提出した共同声明に調印しなかったのは日本だけだった。

続いて、秋元由紀さんがビルマのケースを取り上げ、独裁国家へのODAのあり方を問うた。カンボジア同様、ビルマの軍事独裁政権にとっても日本は最大援助国である。その日本は1989年に円借款を凍結するまで、毎年約500億円のODAを27年間に亘って軍事政権側に供与し続けた。しかし、軍事政権下での開発は住民参加や社会と環境への配慮が皆無なだけでなく、しばしば労働や移住を住民に強制し、それに対する補償も行われなかった。にも拘らず、昨年11月7日に行われた日緬首脳会談で鳩山首相は、「もしビルマの総選挙が我々の期待する方向で行われるのであれば、様々な支援を強めて行く」と述べた。しかし、今年行われる予定の総選挙についてはまだ何も決まっておらず、その上、軍政側は2008年に憲法改定を行って現行体制の保持を永続的なものにしたため、例え選挙が公正に行われたとしても何も変わらないのだ。秋元さんは鳩山首相の「我々の期待する方向」という発言は如何様にも解釈できるので、今後のビルマ選挙の行方と日本政府の反応に注視するよう呼びかけた。その上で秋元さんは日本政府に対して、以下のことにODAを活用すべきと提言した:1)軍政への圧力、2)予算分配を軍事費から国民の教育や保健にシフトするよう働きかけること、3)国内避難民への支援、4)難民受け入れ、5)人権活動への支援。

次に、東智美さんがラオスのナムトゥン2ダムを例に取って、「豊かさ」を数値ではかることと「貧困削減のための開発」に異議を唱えた。東さんによれば、ラオスの国民一人当たりの所得は確かに東アジアの中で最下位であるかもしれないが、この国には豊かな自然があり、人々はその恵みを享受して自然と共存してきた。その生活には数値では測ることのできない「豊かさ」があった。しかし、「貧困削減」の名の下で行われた開発によって、自然は次々に破壊され、人々はこれまで生活の糧を提供してくれた森や川から離れて暮らさなければならなくなった。新しく引っ越した土地ではきれいな家が提供されて、収入も補償によって一時的には増加したが、生計手段を失った住民たちは、これからますます厳しい生活を強いられることになる。これは、貧困を所得という数値ではかろうとしたが故に起きた悲劇である。最後に東さんは「豊かさ」について非常に大事な問いを残した。「1日1ドル以上稼げる生活」と「1日1ドル以下で暮らせる生活」のどちらが「豊か」か?

事例紹介の最後は木口由香さんによるタイのプレゼンである。木口さんは日本のODAによって建設されたシーナカリンダムやラムタコン揚水式水力発電所について、計画・実施・評価・事後対応の各段階における問題点を解説した。シーナカリンダムについては、1980年に完成したものの、ダムの安全性を巡って、住民と実施機関・行政の対立が今でも続いている。そして、ラムタコン揚水式水力発電所については、建設時に環境アセスメントにない爆破が行われ、これによって住民に呼吸器系の疾患が出たにも拘らず、きちんとした健康及び因果関係調査も実施されず、事態はうやむやのまま闇に葬り去られようとしている。これらの事例から、過去のODAの過ちが数十年後もなお、地元住民に被害を与えている一方で、日本はそこから何も学んでいないという現実が浮き彫りになった。

本セミナーは最後に、清水規子さんによるODAの透明性と審査・評価体制に関する提言で締めくくられた。近年ますます活発になりつつある官民連携の動きを踏まえて、清水さんはODAプロジェクトにおける本当の途上国ニーズの見極め、ODAの透明性の確保、及び評価の客観性に疑問を投げかけた。これらの課題は、民間企業が参入することで悪化する可能性がある。また、ODAは本来企業支援のための資金ではなく、途上国の人々のために使われる貴重な税金である。政府は官民連携に円借款を供与する際、特定の企業、または業界を肥やすために限りある資源を無駄にしないよう、あらゆる措置を講じなければならないし、市民団体は今後も官民連携の動向をウォッチして行く必要があると清水さんは強調した。

投稿者 oda_net : 2010年01月26日 15:36

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