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2010年02月28日

JANIC援助効果/開発効果セミナー参加報告

2010年2月12日(金)と23日(火)の二回にわたり、JANIC主催の援助効果/開発効果セミナーに参加しました。
セミナーの概要は以下の通りです。
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第1回 「カナダの市民社会と援助効果:日本の市民社会が学ぶべきこと」
日時: 2月12日(金)9:45~11:45
場所: 国立オリンピック記念青少年総合センター
内容: ノーマン・クック氏(名古屋大学客員教授/元カナダ国際開発庁 国際部所長・NGO担当部長)、高柳彰夫氏(フェリス女学院大学国際交流学部 教授/JANIC援助効果事業助言委員)による「カナダの市民社会と援助効果」に関する講演、及び遠藤衛氏(神戸大学大学院国際協力研究科 博士後期課程/JANIC政策アドバイザー)のファシリテーションの下で参加者による意見交換。

第2回 「NGOの開発効果を問う~NGOは受益者への説明責任を果たしているか~」
日時: 2月23日(火)16:00~19:00
場所: 早稲田奉仕園
内容: 
1.基調講演 「NGOの開発効果に関する英国NGOの取り組み~受益者への説明責任の観点から」
ジュリアン・スロデッキ氏(BOND 開発効果プログラムマネージャー)
2.支援現場における事例紹介 「受益者への説明責任とは?~ネパールにおけるカマイヤ支援の事例から」
定松栄一氏(セーブ・ザ・チルドレンジャパン 事務局次長兼事業部長)
3.パネルディスカッション
ジュリアン・スロデッキ氏、定松栄一氏、黒田かをり氏(CSOネットワーク 共同事業責任者)、遠藤衛氏
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第1回のセミナーで特に印象的だったのは、援助先進国と呼ばれたカナダで保守党政権の政策により、ODAへの市民参加が危ぶまれているという指摘でした。カナダでは1980年代から二国間ODAにNGOが参加するようになり、1990年代半ばまでにカナダ国際開発庁(CIDA)からNGOへの資金供与が急激に増大しました。しかし、ブッシュ政権下のアメリカ同様、カナダでも2006年に誕生したハーパー政権は右派イデオロギーと石油利権が政策決定を牛耳られており、市民社会に対して開放的だった自由党のODA政策をことごとく覆して来ました。

その一例として、市民団体への助成金の削減と独立性の侵害が挙げられます。カナダでは政府が運営資金を全額負担しているNGOが数多く存在しています。これらの団体は総理大臣への報告義務を負うものの、自由党政権の下では自ら理事会をおいて独自の活動を実施してきました。しかし、2006年の政権交代以降、政府はこれらの団体の理事会に右派寄りの人物を送り込み、独立した活動を妨害しようとしました。また、政府の方針に沿わない活動を行う団体に対しては、助成しない措置を採りました。

そして、CIDAもやはりこのような政府のプレッシャーを受けて、援助効果の名の下で、これまで80カ国に及ぶ活動範囲を政治的に重要なアフガンやイラクといった20の国々に絞り込むなどして、活動を大幅に見直すことになりました。また、優先課題もこれまでの「人権」「女性」「環境」「民主主義とガバナンス」から「経済成長」「慈善指向」「食料安全保障」「子どもと若者」に変わりました。これらは明らかに政治的な意向を反映した援助政策であり、非常に危惧すべき状況であると言えます。

第2回のセミナーでは、CSOの説明責任について、講演とパネルディスカッションが行われました。冒頭でまず、スロデッキ氏がなぜCSOの援助効果が必要なのかについて大変分かりやすく説明しました。NGOはドナーからの資金提供を受けて活動をしていますが、ドナーは直接途上国の人々にお金を渡すこともできるはず。そこに敢えてNGOを介在させるのは、NGOが生み出す「付加価値」があるからだとスロデッキ氏は言います。NGOの説明責任とは、言い換えれば、この「付加価値」を明確にすることでもあります。

スロデッキ氏によれば、CSOの説明責任を議論する時、一体誰に対して説明責任を負うかという問題がしばしば持ち上がります。NGOは往々にして運営資金獲得のために膨大な時間と労力を費やしてしまうため、ともすれば一番大事な受益者に対する説明責任を軽視してしまうと彼は指摘します。ビジネスの世界であれば、企業は自分たちの製品やサービスを使う顧客に対して説明責任を負うことは当然であり、顧客の声に耳を傾けなければ良い製品やサービスを提供できるはずはないと誰しもが思っています。だが、この「常識」はNGOの活動の中ではあまり意識されて来ませんでした。その理由の一つに、民間企業と違って援助の世界には「消費者」の声を吸い上げるメカニズムがないことが挙げられています。しかし、最近では、途上国住民の名の下で集めた活動資金がどのように使われるかについて当の本人たちに決める権利があり、途上国の人々は単なる「受益者」ではなく、「権利を有する者(rights holder)」であるという認識が広がりつつあります。従って、NGOは活動の内容や結果を重視するのはもちろんのこと、そこに至るまでの決定プロセスに当事者である地元住民の意見を取り入れなければ、受益者に対する説明責任を果たせたとは言い難いとスロデッキ氏は指摘します。

続いて、定松氏は自らのネパールにおけるカマイヤ支援の経験を元に、受益者への説明責任とはなにか、また、それを現場でどう果たすべきかについて話されました。氏はプロジェクト調査時に自分たちのミッションを明確にしなかったために生じた誤解や3年にわたる現地調査を経て描いた事業プランが支援される側に拒否されたことなどを告白しました。氏自身の試行錯誤に基づくケーススタディーであっただけに、大変説得力がありました。私たち外部の人間がどんなに調査をして理論を組み立てても、途上国で支援を必要とする人々のニーズを完全に把握することは不可能ですし、彼らのニーズにそのまま応えることが良い援助であるとは限りません。だからこそ、自分たちがなぜ途上国に来ているのかをしっかりと地元住民に伝え、それに対する彼らの意見を受け入れ、双方話し合って最適なプロジェクトを形成していってはじめて、本当に役立つ援助が実現できるのだと思います。

今回のセミナーでとりわけ印象深かったの以下の3点です:
1. 援助効果はNGOの存在意義そのものである、
2. 援助は「結果」だけでなく、「プロセス」も重要である、
3. NGOの活動は、意識的にせよ、無意識的にせよ、ドナーの意向や団体ポリシー、先入観など様々なファクターによって影響されている。

2回の援助効果セミナーを通して感じたことは、まず、市民社会のODAへの参加度合いが日本と欧米の援助先進国とでは大きく違うことです。予てより日本の市民社会や国際社会は日本のODAの閉鎖性を指摘してきましたが、カナダやイギリスで市民社会が如何に多くのインプットをODAに対してしていたかを知り、改めて援助後進国日本の課題を見た気がします。近年後退して来たとはいえ、カナダやヨーロッパ諸国のODA実績から学ぶことはまだまだたくさんあり、特にNGOとの「対等なパートナーシップの構築」と市民社会への情報開示が重要であると感じました。

第二に、援助効果に関する議論はしばしばその評価方法などといった技術的な課題に焦点が置かれがちですが、本来、援助は一国の開発の中の一部でしかなく、その開発全体像を無視して援助を語るのはいささか本末転倒だという指摘には大いに頷けました。そして、援助は常に受益者のためのものであり、その受益者の声を決して見失ってはいけないと改めて気づかされました。従って、私たち援助をする側は独断的にプロジェクトを立ち上げるのではなく、受益者の声を聴きながら、この援助が果たして本当に必要かどうかという点から根本的に考えて行かなければならないと思います。

最後に、援助効果の議論が政府の二国間援助からNGOによる草の根レベルの活動にまで広がりつつある中、日本ではCSOの援助効果議論が非常に出遅れている感が否めません。その理由はNGO側のリソースの問題、意識の問題と様々あるかと思いますが、一つには遠藤氏が指摘した、「NGOの活動定義」にあるのではないかと考えております。途上国で活動する日本のNGOの多くは「現地の人々との繋がり」を大切にし、「活動すること、そこにいることに意義がある」という考えを持っています。このような開発援助を目的としない活動を行うNGOに対して「援助効果」を求めることはそもそも不可能であり、これが日本でCSOの援助効果議論がまとまりにくい一因にあるのではないかと、遠藤氏は分析しています。私もこの意見には大変共感します。しかし、今後国際社会の援助効果議論に貢献していくためにも、JANICを中心にCSOの援助効果に積極的に取り組む団体のネットワークを構築して、日本のCSOから建設的な情報や意見を発信できるようにして行く必要があると思います。

投稿者 oda_net : 2010年02月28日 15:44

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